2013年、この5曲

新年明けましておめでとうございます。年末から年始にかけてネット上に数多存在する各音楽ブログでは年間ベスト的な記事が続々と更新され、僕はそれを眺めてただ「はー、これが流行ってたのかあ」なんて思っていました。そこでこのブログでも一応、昨年のまとめ的なものを記しておこうと思った次第です。しかしながらそもそも昨年に出たアルバムで聴いたものは片手で数えられる程度しかないので曲にしよう!となったはいいもののこれも10曲とか20曲とかがきりのいい数字だしまとまった感じがあるのにそれにも届いてすらいなかったので5曲にしました。
生来のめんどくさがりが原因なのか流行を追いかけるのが極端に苦手なのですがそれが年々加速しているといった状況でしょうか。前置きはこれくらいにして早速見て参りましょう。

1.前野健太 / オレらは肉の歩く朝


2013年に出たアルバムは本当に数えるぐらいしか聴きませんでしたが、もしかしたら前野健太を一番聴いたかもしれません。埼玉県出身のシンガーソングライター。日本人化が加速度的に進むジム・オルークをプロデューサーに迎え発表した4作目。昨年のフジロックで大した予備知識もないまま観た後気になってずっとYouTubeで曲を聴いていたのですが(最近はYouTubeでばっかり音楽を聴いています)アルバムが欲しくなり購入。「国家コーラン」、「興味があるの」といったMVが制作されている曲、そして大名曲「東京の空」といった曲たちももちろんいいのですが僕が気に入ったのは軽快なスカの「看護婦たち」、そして本曲「オレらは肉の歩く朝」といったアルバム収録曲でした(これらはYouTubeには音源が無いのでぜひ買ってどうぞ)。
前野健太の声には色気がある。生々しいことを歌ってもそれを感じさせない飄々とした雰囲気がある。タイトル曲「オレらは肉の歩く朝」はピアノの冷ややかな音で始まりだんだんとクレッシェンドしてゆき最後に爆発する言わばマエケンお得意のパターンです。しかしこの曲では例えば「ファックミー」や「友達じゃがまんできない」が持つ激情まで行かない、振りきれない、クールさを保ったままの爆発で、僕はそこがすごくセクシーだと思いました。インタビューにも書いてありましたが、タイトルに特に意味はないようです。詞の「鏡に写った自分は けっこう真面目そうな顔をしていた それがちょっと腹立たしくも、いいと思った」というところがなんかぐっとくる。

2.Fla$hBackS / Fla$hBackS


Jラップシーンは正直全く詳しくありません。普段聴くものもキングギドラとか鬼とかS.L.A.C.K.みたいなメジャーどこばかり。ですが、フラッシュバックスの登場はきちんと押さえていました。なぜなら某有名レコード店の壁面ラックの新入荷商品だけが唯一僕の最新音楽知識のソースだったからです。
川崎という首都圏のゲットー(?) から颯爽と現れた若干18、9歳の3人組。“Fla$hBackS”はダークかつダウンテンポなトラックで後述のジョーイ・バッドアス所属のPro EraだとかOFWGKTAの連中といった「トレンド」とリンクしつつも東京という都市のきりきりした感じもきちんと表れているように勝手に感じています。非常にこれからが楽しみなグループです。JJJのねちっこいフロウとFebbの大口のハッキリしたフロウも好対照。リリックはこれからもっとよくなっていく気もしますが、所々でいいラインがあります。PVで顔しかめて煙ブカブカ吹いてる脇を見たらジュースが置いてあるとか年相応に微笑ましくて好印象だったり。
「やる気 不定期 Style like a 富樫」は2013年最高のパンチライン
“Here”でのうねるドス黒いベースラインも90’sぽくって好きでした。

3.モーニング娘 / 愛の軍団


最近モー娘に興味があります。

4.Joey Bada$$ / Righteous Minds


この曲を収録したジョーイ・バッドアスのアルバム「1999」は2012年にフリー配信されたものなので厳密には昨年の曲ではありません。ですが、わざわざアナログ盤を買いに行った(フィジカル・リリースは昨年でした)ので強引に2013年ということにします。
データで持っているのにわざわざアナログを買ったのはやはり内容がすばらしく良かったからです。僕自身は一つのまとまった作品(アルバム)として音楽を聴くことに少し疑問を持ち始めている節があるのですが形として音源を保持したいという願望はノスタルジックなものなのかもしれません。さて、ノスタルジックと言えばタイトルの「1999」の通り本作は「失われたゴールデン・エラ」=90年代に向けたラブレターのような作品です。打ち込み主体のエレクトロ・サウンドが主流となりヒップホップとEDMの境界線が曖昧になっている現在においてサンプリングに拘ったある種レトロと言っていいサウンドが話題になりました。「1999」という数字は90年代の終わりと戻ることのない過去、そして21世紀という新たな時代の始まりを意味しているのかもしれません。
元ネタはBeatnutsの “Hit Me With That”と同じMonty Alexanderの“Love and Happiness”です。ヒップホップ史に燦然と輝くクラシックのリメイクと言い換えていいでしょう。原曲で鳴り響いていたホーンのような90年代っぽいネタを排除し極力シンプルかつアップテンポにしたことでスマートさが際立たせられています。クラシックを現代的に換骨奪胎する—昨年最もよく聴いた曲のひとつです。

5.tofubeats / 水星 feat.オノマトペ大臣


これも2012年の曲ですがtofubeatsは昨年を代表する人だと思うので取り上げたいと思います。僕個人としてtofubeatsデビューは正直かなり遅かったです。話題になって、話題になって、話題になって、やっと聴いた感じでした。時代性がどうたら、忘却の彼方の90年代がどうたら、アイドルがどうたら、さまざまな切り口で語られる存在ではありますがそれはここで今更言うことでもないし、とにかく言いたいのはこの曲がとんでもなくキャッチーということだけ。僕はMVに登場する仮谷せいらちゃんをボーカルに迎えた“Young & Fresh mix”の方が個人的には好きですが(ちなみにMVでは仮谷せいらちゃんと疑似デートができます。やったねパパ!明日はホームランだ!)。そういえば元ネタのKOJI1200こと今田耕司の「ブロウ ヤ マインド」は全く話題にならないんですね。この曲もテイトウワプロデュースでめちゃめちゃかっこいいです。


こっ、こんなメロウな今田耕司見たことない!!